労働の買い叩きが諸悪の根源?
日本の労働者が長時間低賃金労働を余儀なくされている問題について、その仕組みを解釈するヒントになる本に出会いました。
ケインズというと一般的には「教科書に載ってる昔の経済学者」というイメージでしょうか。彼の言ったことをこのブログですべて説明できるほど僕には能力がないので割愛します。
今回の記事で一番のテーマは、なぜ労働者が長時間労働を強いられるか、です。そしてそれは、企業による労働力の買い叩きにあります。
利益を労働者よりも資本家に分配する企業
企業にとって労働者は二つの顔を持っています。商品やサービスを生産するために無くてはならない存在であり、かつその商品を買ってくれる消費者でもあるわけです。ですから、賃金が上昇すれば全体として企業の収益も向上する、と捉えられます。
しかし、失われた20年を歩んできた日本で起っていた事はこうです。この本の著者が引用している「法人企業統計」で、バブル末期の1990年からリーマンショック前の2007年までの間に注目すると、企業が生み出す付加価値額の内訳比率において人件費の比率が1.8ポイントの上昇だったのに対して、営業純利益(人件費や材料費などを除いたあとの利益)は7.9ポイント上昇していたのです。
これを一言で言えば、会社が儲かっているのに労働者はその恩恵を受けていない、ということ。企業としては人件費を抑えることによって利益を押し上げ(費用が減りますから)、株主にいい顔をできるわけですね。
労働力の供給超過への規制が必要?
企業が人件費削減を達成するには、資産も生産設備ももたない労働者は誰かに雇ってもらわないと生活していけない、という前提条件があります。ですから、いくら賃金が低くても、誰かに雇ってもらわないと生きていけないから、しかたなく働いている、という事態が発生します。
著者はこれを非自発的失業ならぬ「非自発的雇用」と定義しています。
経済学の基本的な考えとして、ある商品、サービスの価格は需要と供給のバランスによってきまる、というものがあります。需要が増えれば価格は上がり、また供給が増えれば価格は下がります。
著者は日本人の長時間労働問題の根源には労働力の「供給超過」があると考えているのです。上司より早く帰るのが気まずいから残業、ときにサービス残業をして遅くまで仕事をする、というのはまさにこれですね。企業からしたら安く労働力を買えているのです。
そこで著者は、労働基準法を改正し、一日の法定労働時間を5時間にすべきと主張しています。これは実際に5時間しか働くな、というのではなく、それ以上の労働には割り増しの賃金を、ということです。
この法改正の有効性は未知数ですが、現在の世の中が企業、資本家が有利になるように傾きすぎていることは間違いないでしょう。
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