投資の名著を読む
金融、投資の世界で名著とされているバートン マルキール「A Random Walk Down Wall Street(ウォール街のランダムウォーカー)」を読みました。
きっかけは、ずいぶん前に勝間和代「お金は銀行に預けるな」という新書(その時のブログ記事へ)を読んだことにさかのぼります。
そのなかで、インデックス投資(例えば日経平均など市場の平均的な成長に投資する。)の妥当性についての知識の深掘りにはこれ!と書かれていたので、古本で購入していたものです。
その分厚さに圧倒され、しばらく本棚の肥やしになっていたのですけれど、今回一念発起して読破しました。
ちなみに全体的な印象としては、前述のように知識の深掘りです。サクッと投資の基本について知りたいのであれば、お金は銀行に預けるなの方をおすすめします。
それを読んでもなお深く知りたいのであれば、本書を読む、という順番がいいでしょう。なぜなら、この本はある意味でまわりくどく、例を多用して、これでもか、というほどガチガチに理論を固めるからです。逆に言えば、かなり例示してくれるので、教科書として親切です。
以下、感想とまとめです。
市場の変動を予測することはできるのか
投資の本ではありますけれど、マルキール氏が学者なので、いわゆる「一ヶ月で○○円誰でも稼げる本!!」みないな内容ではありません。
もっと科学的な、数学的なものです。言い換えると、「一発狙いたい派」にとっては不都合な真実ばかりが並べられているので、投機が大好きな人にとってはつまらないかもしれません。
そもそも彼は、効率的市場仮説というものを信じているので、市場の変動を人間が予測することは不可能だと、”基本的には”考えています。(譲歩して全否定もしていないところがまた学者らしい。)
ですから、先ほどの「一ヶ月で・・・」のような投資方法についても、仮に短期的にうまく行っても、長期的に見ると、市場の成長率に投資するインデックス投資を貫いている人の利益すら上回ることはない、という事をひたすら説いています。
要は、強欲に相場を読もうとすると、結局は堅実な人にも負けますよ、ということです。
ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析は無効
この本は単に「市場は人間には読めない」ことを証明するだけではなく、バブルの歴史や、数々の「市場の予測法」についての歴史も紹介しています。
そのため、投資に少しでも興味のある人なら割と面白く読めると思います。
特に初めの方のバブルの歴史は「人間って、懲りない生き物なんだな」としみじみ感じましたね。
その懲りない人間が必死に市場の動きを読もうとして考案してきた方法は主に二つあります。大雑把にいえば過去から分析するものと、現在から分析するものです。それぞれ
- テクニカル分析
- ファンダメンタルズ分析
といいます。これらについて、この本ではコテンパンに叩いています。というか、やってもいいけど何も考えずにインデックス投資している人と同じか、それよりも低い利益しか得られませんよ、と言っています。
コントロールできるのはリスクだけ
そして、唯一コントロールできるとしたらリスクであり、それはその人の年齢や、どれくらいスリリングな投資をしたいのかによってある程度決まっている、ということです。
老人がリスクをとって儲けを狙うのはおかしいし、若者が全財産を預金しているのもおかしい。
老人はもうそれほど稼ぐ事ができない、言い換えれば損失を補填できないのにリスクをとるのは危険だし、若者は、これからの所得で損失を補填できるのにリスクをとらないのがそれこそ損なのですね。
インデックス投資は基本として理解するほうがいい
この本はインデックス投資、またはパッシブ投資の名著であり、最も堅実で、ある意味では「つまらない」投資の本でしょう。
しかし、どんなにアクティブな投資が好きで、一発狙いたいひとでも、一度は読んでおくと良い本だなと感じました。
著者は一発狙うことも否定はしていないのです。現実に一発狙える状況が起こり得ていることも認めています。
少なくとも、「一ヶ月で○○円誰でも稼げる本!!」が飛ぶように売れる仕組みも、証券アナリストの存在意義についても理解が深まります。
その確固たる真実、社会の仕組みを前にしてもなお、デイトレードをするというのであれば、ある意味、「一ヶ月で○○円誰でも稼げる本!!」の著者も、証券アナリストも、そのデイトレーダーには頭があがらない事でしょう。
運用方法でどういう姿勢をとるにしても、真面目に資産運用を考えている人にはオススメの一冊です。
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