Apple Musicは音楽文化に革命を起こす
7月に満を持してサービスインした「Apple Music」。みなさんはもう体験しただろうか。
Apple Musicはその名の通り、アップルが提供する音楽のストリーミング配信サービスのこと。
本来は月額980円という有料サービスではあるものの、三ヶ月間のお試し期間が設けられているので、ぜひ体験してみて欲しい。
音楽ファンである私はもちろん漏れなく登録して使い倒している。
そして、利用し始めて2週間にして、こう確信している。
Apple Musicは音楽体験のあり方に革命的な変化をもたらすに違いない、と。
「CDがさらに売れなくなるからやめてくれ」という声
さて、定額制の音楽サービスが登場し始めると、自ずとその普及に対しての是非が議論となる。
否定的な立場としては、やはり「CDが売れなくなる!」というものだ。確かに、毎月一定額さえ払っていれば、そして自分の好きな音楽が定額サービスに含まれていれば、わざわざCDなど買おうとしなくなるかもしれない。
そうした消費者行動の変化は容易に想像できる。
そして、たしかに、そうかもしれない。短期的にはCDなどのカタチのある媒体が売れなくなることにより業界としても厳しい時代が訪れる可能性は否定できるものではない。
しかし、長期的な視点では、定額制の音楽配信サービスは必ずしも音楽業界に対して悪影響を与えるばかりではないだろう。
むしろ、私は文化としての音楽を今以上に広く浸透させる起爆剤になり得るとさえ考えている。
文化としての音楽体験の再定義
目先のCD売り上げの影響を跳ね返すほどの起爆剤となり得るのはなぜか。
その理由は、Apple Musicによって「音楽体験」の定義が書き換えられることにある。文化としての音楽が再定義されるのだ。
考えられる変化について、主に3つを挙げて見ていきたい。
つまみ食いならぬ、「つまみ聴き」が可能に
まず、定額制による最大の恩恵といっても良いのが、聴きたい曲を実際に聴くに至るまでのハードルがグッと下がることに違いない。音楽との距離が縮まるのだ。
CMで流れていたあの曲、街中で流れていたBGM、好きなんだけど音源は持っていない思い出の曲。
改めて音源を買おう、とか、またはレンタルしてまで聴こうとは思わないけれど、なんとなく聴きたくなる曲。
そんな曲の一曲や二曲は、おそらく誰しもにあると思う。
Apple Musicは、そんな曲をすぐに耳に届けてくれる。つまみ食いならぬ、つまみ聴きをさせてくれる。
音楽と私たちのふれあいの邪魔をしていた障壁が、取り払われるのだ。
「掘り当てるもの」から「提案されるもの」に
次に、レコメンド機能により音楽は「掘り当てるもの」から「提案されるもの」になる。
ある程度音楽に興味がある人であれば、自分の好みのアーティストと似たような傾向の曲を探したくなるものだろう。
それも、今までのように夜な夜なGoogleで検索せずとも、ただ待っていればよい。
普段聴く音楽の傾向をAppleMusicに教えておけば、似たようなアーティストを探し出してくれるのだから。
ソーシャル化で開花するシェアリングミュージック
そして、私が最も注目しているのが、「音楽のソーシャル化」だ。
SNSで音楽がシェアされるようになることは、文化としての音楽をよりポピュラーなものにする可能性を十分持っている。
写真をTwitterに載せるように、音楽をシェアする。
もちろん、間接的に音楽をシェアする方法として、Youtubeにアップロードされている音楽動画のリンクを共有する、ということも実際に行われている。ただ、こうした動画の中には少なからず違法にアップロードされているものがあり(なかには収益化までしているけしからんものも!)、健全なシェアのあり方ではない。
Apple Musicは、健全に、簡単に、心地よく、音楽をシェアできる。
新しい収益源とSNSによるマーケティングに活路も
このように、Apple Musicは今まで音楽と私たちの間に絶妙に存在していた壁を取っ払って距離を縮める力を持っている。
いままで抑制されていた「音楽を聴きたい」「分かち合いたい」気持ちを解放してくれるのだ。
この変化は、音楽業界、アーティストにとってチャンスになり得る。商業的には、いままでCDを買わなかったライトな音楽ファンのニーズを収益化できる。
そして、この革命がもたらすものはそれだけではない。
SNS効果により、現在ブログやニュースメディアで見られるような「バズる」音楽が現れるかもしれない。無名のアーティストがSNS発のブームであっという間にスターになるかもしれない。Apple Musicからの収益だけで食っていく、とまでは言わないが、新しいマーケティングの一助になり得るだろう。
残念ながら現時点では聴くことのできる曲に偏りがあるのも事実。特にJPOPはそれが顕著だ。
日本の音楽業界も、この革命に乗り遅れずに新しい道を模索すべきではないだろうか。
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